人が進んでリスクを取る度合いは、個人差があります。しかし、個人領域では個人の判断によることでも、機械安全の分野では規格で評価および規制する必要があります。安全上重大なエラーの発生したオートメーションシステムが一定期間稼働を継続可能にするために、どのリスクが許容可能であるか、どのエラーが致命的か、規格の観点から、どのような条件で許容できるのか?
これらの疑問は新しい安全の考え方を反映しています。したがって、機能安全制御システムは、故障発生時に、単に停止するべきではありません。即時停止ではなく、余裕をもって状況を報告し、「安全上、合理的な一定時間」、稼働を続けるべきです。
故障耐性とは、故障状態やエラーにより機能が低下しても、技術的なシステムによって機能を維持できることを意味します。故障耐性システムには故障検出だけでなく、適切な故障評価も必要です。検出された故障に耐えられるのか、或いは非常に深刻な故障のため、即時停止（シャットダウン）が避けられないのか判断可能にするためです。
このタイプの故障評価は、「従来型のファクトリーオートメーションシステム」の実装では、現在のところ、一般的ではありません。しかしながら、故障耐性は故障評価なしでは実現できません。当然ながら、適切な設計がなければ、機器やシステムの段階的な故障反応の決定を行うことは不可能です。故障耐性のある機器やシステムの開発者およびユーザは、劣化状態でオペレーション継続の期間Δtdegも定義する必要があります。必要であれば、追加のリスク低減対策を指定し、その内容を取扱説明書に含めます。実践的な例を挙げると、この情報を使用して、処理中のステップを終了することができます。
機械エンジニアリングでは、機能安全制御システムは機械指令(2006/42/EC)に準拠する健康安全保護要件の対応をサポートします。まず最初のステップは、EN ISO 12100に基づくリスクの分析およびリスクの見積もりです。この規格は基本的なハザードを詳述し、設計技師が、関連する重大なハザードを特定しやすくしています。それらのハザードをリスク低減措置によって、許容可能な残留リスクになるまで低減します。
制御の保護対策を使用する場合、製造業者はEN ISO 13849-1および/またはIEC 62061に従って設計する必要があります。技術的な文書には、これらの対策を構築するためのガイドラインの他、安全関連の信頼性および意図する用途も含まれています。
今日の機能安全制御システムは、安全な状態が非通電の１つであるように設計されています。つまり、すべての危険な動作が停止されます。これは、電源を除去して停止し、安全な状態であるあらゆる機械設備にとって正しい選択です。
しかし、Industrie 4.0などの影響で、ますます多くの機械設備で可用性の向上が要求されています。また、「ハード停止」はさらなる危険の原因となる可能性があるため、リスク分析で考慮する必要があります。そのため、電源除去が故障発生時の唯一の対応と言う定説は、時代遅れになっています。
ZVEI (ドイツ電気・電子工業連盟)内の作業部会は、ピルツとIFA（労働安全衛生研究所）と共同で複数のホワイトペーパーを作成し、設備や機械の機能安全を活用した故障耐性を持つ機器やシステムについて、基本原則を説明しています。ホワイトペーパーは、安全関連のセンサやパワードライブで劣化した安全サブファンクションによって、一時的にオペレーションを実行することは、機械指令の目的に合致しており、整合規格EN ISO 13849またはEN 62061に反していないことを示すための資料です。
故障発生時、電源の即時除去が定説である、規格に基づく、劣化状態のブレーキのオペレーション。これにより、設備や機械の安全性と可用性が向上します。
ZVEIのTASi作業部会はユーザおよび製造業者がこれらのメリットを機械類に実装し、オペレータに恩恵を享受させるよう呼び掛けています。
ホワイトペーパーは、主に機械のコントローラの安全機能やサブシステムの設計、実装を行う機械メーカやシステムインテグレータを対象としています。この情報は、製品開発で、安全関連機器およびシステムの設計にも応用できます。ホワイトペーパーはZVEIウェブサイトから無料でダウンロードできます。
ホワイトペーパーの第1章では、劣化状態でオペレーションする際の原則が説明されています。第2部を適用する前に、第1部を考慮する必要があります。
第2部では、人の保護要件を無視することなく、故障シナリオでも機械設備に稼働を許容する故障耐性のある安全機能の実装方法を説明します。
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