トーマス・ピルツ: デジタルオートメーションにおけるThe Spirit of Safety

(納入に歯止め)

機械安全――要件からファシリテータまで 
産業革命の始めから前世紀の始めまで、機械の主な焦点は生産性でした。人件費は低く、それはすなわち安全対策への投資が推進されていなかったことを意味しました。今日、私たちが知っている機械安全は、遡ること40年にも満たないものです。機械指令に変更が加えられたのは、1986年のことです。この時から、機械安全はヨーロッパで必須となりました。

それまでは、安全を確保する最も簡単な方法として、物理的に分離して実装していました。バリアによって、許可された従業員のみが手指でプレスを操作できるよう設定されていたのです。怪我のリスクはなくなりますが、従業員の満足度や人間工学に基づいた配慮はありませんでした。 

そして、今から35年前の1987年、PNOZ–Pilz not-Aus zwangsgefü hrt (ピルツ強制ガイド非常停止) は、機械指令変更の好機を利用して市場に参入しました。危険が発生した場合に、機械が確実に停止することを保証した世界初の安全リレーです。従来の回路よりも小型で、操作が容易な、認証取得の型式審査のおかげで、何よりも安全です。法的な状況やこの機械の実装に関しても、機械安全がますます重要になっている時代に適合していました。この機械安全の実装は、設備オペレータにとってなるべく複雑にならないように配慮されています。当初、機械安全がPNOZで実装されていました。今日では、PNOZは安全リレーの代名詞になっています。 

今日、私たちが理解している安全オートメーションは、ピルツが世界初のプログラマブル安全コントローラPSS 3000を発売した1995年から存在しています。この時点から、ようやく安全技術で電子制御システムを使用することができるようになりました。それ以前は、明示的に禁止されていたのです。法的要件は、連邦省庁や欧州委員会との厳しい交渉の後に変更されました。 

そして現在、欧州機械指令とOSHAまたはULの北米規格をロールモデルとして、近年、安全規格のグローバルネットワークを確立する作業が開始されています。いまだ完全とは言えません。しかしながら、ますます多くの企業が、安全性は人間の苦痛を軽減するだけではなく、経済面でも重要であることを理解するようになっています。私たちは、過去と現在の、この進歩に貢献する機会を得られたことに感謝しています。 

そして、この進歩は続きます。多くの分野で、作業や作業空間を共有するため、人と機械の間の距離が小さくなっています。安全性の担保によって、人とロボットの協働作業が促進されています。また、私たちがめざす安全性は、設備や機械の可用性を高め、生産性の向上にも一役買っています。したがって、当社のソリューションは、機械の生産性を重視したエンジニアリングのニーズと機械ユーザのニーズに完全に一致しています。デジタル化やセキュリティなどのトピックは、人と機械を保護するための新たな課題を生み出します。本日は、デジタルオートメーションにおけるThe Spirit of Safetyの理念の下、これらの課題に対するピルツの回答をいくつかご紹介します。 

安全とセキュリティの密接な関連
エンジニアリングや産業は、安全性に関しては、ある程度達成できていると言えますが、セキュリティに関してはまだまだ十分ではありません。セキュリティは、もはやスケジュールが許せば対処するというものではないのです。それはエンジニアリングはもとより産業においてさえ、最も重要で緊急性の高いとも言えるトピックなのです。 
セキュリティは、以前はITセキュリティの形で情報技術(IT)の仕事でした。今日、生産および産業設備は、情報技術を用いて、密接につながっています。これをOTまたは産業サイバーセキュリティと呼びます。それは、生産および産業設備を意図的または意図しない不具合から守る方法について説明しています。産業サイバーセキュリティの目的は、設備や機械の可用性、機械のデータや処理の完全性および機密性を保証することです。
データ管理が適切になされていなければ、会社と従業員の安全は危険にさらされることになります。セキュリティなくして安全なし、安全なくして人を保護することはできません。 
ピルツは、安全とセキュリティに対する総合的なアプローチだけが、人と機械の保護を保証できると考えています。したがって、セキュリティ対策を装置 (制御システムなど) に直接実装することも絶対必要です。ここでは、システムのライフサイクル全体を考慮する必要があります。つまり、セキュリティ対策は開発から始まります。
当社の機能安全管理 (FSM) は、約20年間、安全性のチェックと認証を行ってきました。さらに、過去数年間、ピルツは開発プロセスをIEC 62443-4-1「産業用オートメーションおよび産業用制御システムのセキュリティ–パート4-1：安全製品の開発ライフサイクルの要件」に適合させており、安全開発を実現しています。TÜV Südは、現在これを監査で認証しています。戦略的には、この認証は機能安全の認証と同様に重要です。 

安全製品から安全アプリケーションまで
2022年の安全な機械をご覧いただきましょう。

オペレーティングモード選択のための安全プロセスアクセス
オペレーティングモード選択およびアクセス許可システムPITmodeは、現場での不正アクセスから保護するために使用できます。オペレータは連動するRFIDトランスポンダキーで、お客様の指定、要件に合わせて、アクセス許可を高い信頼性で、個別に管理できます。

HMIおよび制御システムへのプロセスアクセス
オペレータターミナルPMI (ピルツヒューマンマシンインタフェース) は、オペレータがテクニカルプロセスを操作、監視、および制御するために使用されます。ピルツは設備および機械向けのWebベースの視覚化ソリューションPASvisuを提供します。

ゲートまたはフラップを介した物理的なアクセス
フラップおよびアクセス扉の人員・プロセス保護は次の通りです。ピルツの安全扉システムは、機械の動作を停止して、機械や設備の危険動作や部品の飛散から保護します。安全リレーmyPNOZや小型安全ココントロールシステムPNOZmulti 2などの安全制御技術と組み合わせが可能です。

HMIおよび制御システムへのリモートアクセス
SecurityBridgeファイアウォールは、データの不正操作を防止します。制御ネットワーク内で、診断またはコンフィグレーションツールとコントローラ間の接続を不正操作から保護し、外界への安全な接続を実現します。データはほとんど遅延なく転送されます。 
当社の安全とセキュリティのポートフォリオは、これから妹が後で紹介する産業サイバーセキュリティのさまざまなサービスに集約される予定です。

世界中の安全およびセキュリティの規格
デジタル化とセキュリティのトピックでは、既存の規格と指令の調整と新しい規格の開発が必要です。欧州機械指令は、機械安全のさらなる発展のための重要な推進力となっています。現在、新しいEU機械規制を形成するために改正されています。デジタル化の技術的進歩によって生じる可能性のある課題に触れています。したがって、安全コンポーネントの定義には、安全機能を実行するソフトウェアも含まれるようになりました。欧州委員会のドラフトと平行して、人工知能 (AI) に関するEU規制のドラフトも発表されました。このドラフトは、AIを使用するすべての製品およびその用途について記述することを目的としています。新しい機械規制では、セキュリティのトピックも必須となります。機械の設計および製造中に機能安全に準拠するための本質的な規格は、現在改正中です。ISO 13849は夏に発行が予定されており、ソフトウェアとその要件により重点を置いています。IEC 62061は2021年に発行され、特にセキュリティのトピックを扱っています。
キーワードセキュリティ: ドイツでは、新しいITセキュリティ法が策定されています。欧州では、ネットワークと情報の高いセキュリティを保証するための指令 (NIS指令) が改正され、NIS2指令とサイバーレジリエンス法が作成され、中国では必須の数多くの規制への対応が行われています。
以前は重要なインフラストラクチャを意味する「必須エンティティ」のみがNIS指令の影響を受けていました。2024年に発行が予定されている保留中のNIS2指令では、範囲が拡大され「重要なエンティティ」が含まれるようになります。これには、たとえば従業員が50人以上、年間売上高が1,000万ユーロのヨーロッパの機械メーカが含まれます。VDMAでは、ピルツを含むヨーロッパの約9,000社がこの影響を受けると推定しています。 
したがって機械メーカにとっては、セキュリティに関して、新しい、また場合によっては非常に厳格な法的要件が予想されます。しかし、これらの企業は現在、このことをまったく認識していません。これは、情報システム (IT/OTセキュリティ) の運用と、ネットワークシステム (コンポーネント、設備、機械) に当てはまります。 

セキュリティに関する法律規定は、世界の他の地域でも厳しくなっています。たとえば中国では、次のような状況です。2021年9月、「データセキュリティ法」 (DSL) と「ネットワーク製品セキュリティの脆弱性管理に関する規則」の両方が発効しました。後者は、製品にセキュリティ上の脆弱性が発生した場合の報告手段と義務 (「開示」) をより明確に定義しています。2021年11月1日以降、「個人情報保護法」 (欧州の一般データ保護規則と同様) が適用されるようになりました。中国でデータを収集する外国企業もこの規制の対象となります。 

「安全の大使」として、ピルツは現在の規格を策定するために、数十年にわたり集中的に取り組み、指令の策定に携わってきました。私たちは、実践から生じる問題を代弁しています。ピルツの30名以上の専門家が、約80の規格委員会で約100の製品およびアプリケーション規格の策定に積極的に支援し、世界中の安全規格の策定にも積極的に貢献しています。特に、機械安全セグメントで最も重要な委員会である中国の規格委員会「中国の規格管理委員会の機械類の安全性に関するSAC/TC 208国家技術委員会」での規格策定にも貢献しました。ピルツは、2004年に加盟し、外国企業としてメンバーになった最初の企業です。